心を全部奪って
「じゃあなー」


「おう、ありがとなー。

また来いよー」


「ひまりちゃーん、また会おうねー」


「おやすみー、ひまりちゃーん」


「おやすみなさい」


三人にペコリ頭を下げて、居酒屋を後にした。


外はすっかり暗くなっていて、人通りも少なくなっていた。


「あの、ごちそうさまでした」


結局、おごってもらっちゃった。


「どう?あの店、味がいいだろ?」


「うん。それは思った。

どれもみんなおいしいから、ビックリしちゃった」


「ナオトはあれでよかったんだよ。

大学出たのに居酒屋始めたりして、親に申し訳ないって言ってたけど。

才能を生かした職に就けて、俺はすげー嬉しく思うよ」


キャッチャーをやっていたというナオトさん。


サークルでは、みんなのまとめ役だったらしい。


人当たりが良いし、優しいし、話しているとなんだかホッとする。


あんな人がいる店なら、何度でも通いたいって思ってしまう。


そうね。


天職だったのかもしれない。

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