piano
流れ続けていたメロディーも、やがて終わりをむかえる。
最後の音が、ゆっくりと余韻を残しながら消えていくと、少年は笑顔を見せて、小さく拍手した。
「あんたの音には不思議な力があるよ。ひとの心を明るくさせる」
サヤは照れたようにちょっとだけ微笑んだ。
「ありがと。
……あの、おばあさんは?」
「消えたよ。多分、いくべき場所へ行ったはず。ばあさんは、暗い感情だけでこの世に留まっていたから、陽の光とあんたの音に耐えられなかったんだ」
少年は、何かを呟いた。
「何?」
とサヤは聞き返す。
「だから、ごめん。……なんかおれのせいであんた利用されたみたいで」
少し赤らんで言う少年を、不意にかわいいと思った。
こんな……寂しい、以外の感情を持ったのは久しぶりだ。
だからつい、
「いいよ、もう、終わったことだし」
なんて、微笑みと一緒に言ってしまうんだ。
「ありがとう。
……また、会おう」
ふっと、頬に風を感じた。
サヤは慌てて辺りを見回す。
少年の姿はもうなくて、だけどサヤの胸にはどこか温かい想いが残った──…