piano
「……!」
姿を見せたのは、……あの少年だった。
いや、少年だと思っていたけれど、光の下で見ると、サヤより幾つか年上だろう。
目があう。悪戯っぽく笑いかけられて、サヤもつい微笑んだ。
そのサヤの肩を母親がつん、とつついて、
「ね。カッコいいと思わない?」
……どうやら面食いな母親は、何よりもまず、彼の容姿で雇うと決めたらしい。
曖昧に笑うサヤに、
「あんたはいつまでも不登校してないで、学校行けば?」
母親はそう言って、
「私明日からまた仕事なのよ。しばらく帰れないと思うけど、如月君、よろしくね」
扉ごしに言いながら慌ただしく出掛けていった。