ｐｉａｎｏ
少年はパッと跳んだ。

間一髪、おばあさんの、その緑色の手が触れるのをかわす。

そして、さささ、とおばあさんが再び近くへ来る前に、ざ、っと閉めきられていたカーテンを開けた。


さぁっと、部屋いっぱいに光が溢れる。


「おまえ〜……」


深い怨みを込めた声で、おばあさんは呟く。しかしさっきまでより、動きが機敏ではない。


『にゃ〜ご』

雰囲気に似合わない、間の抜けた鳴き声がした。

おばあさんが連れてきた、黒猫だ。

少年が見やると、黒猫はだんだんとサヤを追いつめていた。


だけど、少年は、人に構っている場合ではなかった。

サヤに気をとられていた、ちょっとした間に、もうおばあさんが目の前に迫ってきていて、片手にナイフをかまえ、

「どこから斬ろうか」

とでも言いたげな笑みを浮かべていたから。

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表紙・目次

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