Taboo
出会い前
猫の肉球、桃の缶詰、金木犀の匂い、近所の銭湯、ピアノの音…私の好きなもの。
長蛇の列、酢豚のパイン、タバコの煙、両親の喧嘩、鏡の自分…私の嫌いなもの。
いつもの時間に、いつもの地下鉄に乗って、いつもの駅に着くまで、ふと思い浮かべたこと。
何か、足りない。
何か、忘れてる。
そんな違和感を感じながらも、さっき駅の売店で買った一冊の雑誌を、無造作にめくった。
これ、かな…。
手を止めたページには、あるミュージックスクールの広告が書かれてあった。
いつもの駅から地上に出る頃には、そこに電話をかけていた。


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