優しい世界の愛し方
私はひきつった笑顔を浮かべながら、小さく手をふった。



……あの後、来栖くんはびしょ濡れの私にジャージを貸してくれた。


男子用だから、サイズが大きくてぶかぶかだったけれど。

それでも濡れたまま帰らなくてすむ。

それがありがたかった。

「ジャージありがと。洗濯して返すから」
「いいよいいよ。気にしないで!」


彼は相変わらずのさわやか笑顔でそう言った。


うん、彼もこう言っていることだし。

これでやっと帰れる!

「じゃあ、また明日」

来栖くんに短く言葉を返し、教室から出ようとすると……。
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