優しい世界の愛し方
......。

いや、まだだ。まだチャンスはある。

さすがに放課後なら話しかける事くらい可能なはずだ!

次はチャイムが鳴ったと同時に話しかければ問題はない。きっと!



そうして放課後。

キーンコーンカーンコーン

授業終了のチャイムがなったと同時、私は来栖くんの席に歩を進める。

「来栖く......」
「いーおーり!!」

私の声をかき消すように男子の声が響く。

思わず私は周りを見渡した。

馬鹿な.....!今このクラスで私以外に来栖くんを呼ぶ声はない!

一体誰が......

そう思ったとき、私は気づいた。
来栖くんの席は廊下側であることに。

つまり。

「部活行こうぜ。いおり」

(た、他クラスのサッカー部員....だと.....!)


廊下の窓からは、サッカーのユニフォームに身を包んだ男子数人が顔をのぞかせていた。

おそらく、チャイムが鳴るよりも早く授業が終わったのだろう。

そして私たちの授業が終わるのを廊下で待っていた。

私の席は真ん中の列の最後尾。来栖くんは廊下側の列の前から2番目。

どちらが早いかなんて、聞くまでもない。

「今行くよ」

来栖くんは笑顔で教室を出ていく。

完敗だ.......。
結局渡せなかった......。
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