異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
とはいえ、ここは元々調理場ではないので、一般家庭に当たり前のようにある調理マシンがない。ある意味オレのいた日本に舞い戻ったような感じだ。
ボタンひとつで思い通りの大きさと形に刻んでくれるフードプロセッサはないので、ものすごく原始的でなじみのある包丁を使って野菜や肉を刻む。
米と水を入れるだけでといで水加減も調整してホカホカご飯を炊いてくれる炊飯器もないので自力でといで鍋で炊く。
これら一連の作業をシャスは滞りなくロティに指示を出しつつてきぱきとこなしていく。ハイテク化されたクランベールで、やけに手慣れている。
不思議に思って尋ねると、シャスは照れくさそうに笑いながら答えた。
「いつもはリズと同じようにサプリだけのことが多いんだ。だから時々普通のものが食べたくなるんだよ。でも入局して間もない頃は収入が少なくてめったに外食なんてぜいたくできなかったから、自分で作るしかなかったってだけ」
へぇ、オレなんか貧乏で食い物買う金がなかったら、水飲んで我慢してたけどな。自分で作ろうなんて発想がない。
そもそも調理場ではないこの給湯室に包丁はともかく、鍋やフライパンがあることも不思議に思っていたが、シャスが持ち込んだものだという。
元々あった調理機器は電磁調理器とあたためと解凍しかできない電子レンジのような機械だけだ。電子制御の機器を個人的に持ち込むのはセキュリティの観点から面倒な申請と許可が必要なので、原始的な調理器具しか持ち込めなかったという事情があるらしい。