異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
トマーテのペーストが入った真空パックの封を切りながら、シャスがオレに尋ねた。
「シーナ、これ食ったことある? オムライスの味付けに使うんだよな? このままでいいのかな」
「トマーテをペーストにしただけなら酸味が強すぎると思う。ちょっと舐めさせて」
「ほら」
シャスが差し出した袋から、ペーストをスプーンですくって口に運ぶ。
オレの記憶にある味のイメージとトマーテペーストの味データを比較して人工知能が結果を伝えた。
「味覚補正。塩分+20%、糖分+40%」
「パーセントで言われてもピンとこねーよ。おまえが味見しながら自分で補正しろ」
「え……」
するどい指摘と共にシャスがトマーテペーストの味補正をオレに丸投げする。
これってオムライスの味を大きく左右する最重要任務を託されたってことではないだろうか。
焦ったオレはシャスの腕を掴まえて訴えた。
「いや、オレ料理したことないから、やり方わからないし」
「味見しながら調味料を少しずつ加えて混ぜるだけだ。料理だって気負う必要ないよ。だいいち味を知ってるのはおまえだけなんだろ?」
「たぶんそうだけど……」
ロティが知らないってことは、データとして残ってないってことだ。バージュ博士の家庭内創作料理ということなのだろう。
「大丈夫よ。味見しすぎて多少目減りしても、余分に買ってあるから」
タマネギの皮を剥いていたロティが、向こうから予備のトマーテペーストをヒラヒラと振りながらニコニコとオレを突き放す。
さっきまでラブラブ認定されてたのにつれない。いや、認定してたのはフェランドだけなんだけど。
味方を失ったオレは結局自分で引き受けるしかなくなった。大きくため息をついてうなだれる。
「わかった……」
「じゃ、まかせた」
軽く手を挙げてシャスはロティの隣に戻って行った。オレはトマーテペーストをボウルに移して渡された調味料を少しずつ加えながら味を確かめる。