異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 トマーテは地球上のトマトよりも酸味が強いような気がする。調味料にもなんだか知らないがハーブが入っているので、オレの知ってるトマトケチャップと丸っきり同じものにはならないだろう。
 そもそもトマトケチャップにはトマト以外に何が入っているのかオレは知らない。人工知能の比較結果を信じて調整するだけだ。どれだけ調味料を投入したかはちゃんとカウントしている。その辺にぬかりはない。

 少ししてなんとなくそれっぽいものができあがった。「トマトケチャップ」のラベルをつけて記憶領域の「オムライス」エリアにデータを保存する。

「よし、できた」
「おつかれ」
「おつかれさま」

 声をかけられ、ふと見ると、ふたりがならんでこちらを見つめている。

「あれ? 待っててくれたの?」
「だってシーナは作り方を知りたいんでしょう?」
「しっかり見て覚えてもらわないとな」
「ありがとう」

 オレの作ったなんちゃってトマトケチャップを受け取ったシャスはロティとならんで材料を刻み始めた。シャスがキノコと鶏肉、ロティがタマネギを切る。
 オレは二人の間に立って、その手元を観察した。ふたりの見事な包丁さばきに感心する。

「ロティって包丁の使い方どうやって覚えたの?」
「シャスさんに教えてもらったの」
「なるほど」

 言われてみれば、ふたりの包丁さばきは鏡に映したようにそっくりだ。オレが今しているように、ロティはシャスの動きを記録して、それを自分の体で再現しながら覚えたのだろう。

 オレが記録しながら見とれている間に、ふたりは材料を切り終えて皿やボウルに移した。ロティが炊きあがった米をボウルに移す。米の炊き方はキャンプでやったことあるからオレも知っている。

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