異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
割った卵の入ったボウルをかき混ぜながら、シャスが尋ねた。
「卵の味付けは?」
「いらないと思う。上にソースかけるから」
「そうか」
溶き卵のボウルを持ったまま、シャスは電磁調理器にフライパンを載せながらオレを振り返った。
「じゃあ作るから、しっかり記録しろよ」
「うん」
シャスはフライパンに油を引いてしばらく熱した後、溶き卵を薄く広げて薄焼き卵を作った。焼き上がった卵を皿に移し、空いたフライパンに鶏肉を放り込む。肉表面の色が変わってきたとき、タマネギときのこが投入された。ジュージューと油がはねる音と炒められた肉や野菜の香ばしい香りに、人間だったら腹が鳴りそうだ。
フライパンの中を木ベラでかき混ぜながら調味料を振って味付けをする。シャスがくいっと手首を小さく返すたびにフライパンの中で食材が踊った。
すげぇ、あざやか!
こんなの調理師の技だと思ってた。一般人にもできる奴がいるとは!
ごはんを投入して炒めた食材と混ぜ合わせた後は、いよいよオレが作ったトマトケチャップの出番だ。
シャスがケチャップの入ったボウルを持ってオレの方を向いた。
「シーナ、もう一度さっきの画像見せて」
「うん」
オレはもう一度手のひらの上にチキンライスの画像を表示する。シャスはそれを見ながらフライパンの中にケチャップを垂らした。
「色合いと質感からすると、このくらいかな……」
つぶやいてフライパンの中身をかき混ぜた後、シャスはフライパンごとオレの前に突き出した。
「ちょっと味見して」
突き出されたフライパンからオレンジ色に染まったチキンライスをスプーンでひとすくい口に運ぶ。