異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
クランベール王国の科学は、地球のそれを遙かにしのぐ。街中にはSF映画やアニメではおなじみのエアカーやエアバイクが当たり前のように走っている。というか飛んでいる。基本的にオートパイロットらしい。そして百年前にはすでに、人間そっくりのロボットが普通にいたという。
もっともその頃のヒューマノイド・ロボットは、見かけこそ人間そっくりだが、感情も人格もなかった。内蔵プログラムによって人の言動や命令に反応するだけのもので、精巧すぎる機械でしかない。
主な就業先は性風俗店だったという。
その後、時の経過と共に技術はめざましく発展し、現在では人にはできない危険作業はもとより、貴族の従僕、家庭教師、飲食店の給仕など様々な分野でヒューマノイド・ロボットは働いている。
意外なことにオレのいる警察局ではこれまでロボット捜査員はいなかったらしい。凶悪犯相手の思いきり危険な作業もあるのに、だ。
なぜなら、この国のロボットには「絶対命令」という何よりも最優先の命令プログラムをインプットすることが義務づけられているからだ。
絶対命令とは以下の通り。
1、決して人を傷つけてはならない。また、人が傷つくのを見過ごしてはならない。
2、1と法に反すること以外は人の命令を聞かなければならない。マスターの命令は最優先。
3、1と2に反しない限り自分の身を守ること。
微妙に違うところもあるけど、ようするにロボット三原則?
人工知能搭載のロボットは必ずインプットするように法律で義務づけられている。ヒューマノイド・ロボットも当然ながらインプット対象だ。
そのため絶対命令がマイナスに働いて、たとえ凶悪犯でも相手が人間である限り、殴ることなどできないし、動くなと命令されれば動けなくなったりするのだ。
マスター命令で「犯人の言うことを聞くな」と命令されていたとしても、傷つけないようにというのはかなりなネックになる。なにしろ人間はちょっと強く掴まれただけでも簡単にアザを作ったりするからな。
同じ理由でロボット兵士もいない。
ところが、近年ヒューマノイド・ロボットの社会進出が進むに従って、犯罪の世界にもヒューマノイド・ロボットが進出してきたらしい。
犯人側がロボットとなると、逆に人間の方に分が悪い。犯罪に使われるロボットは法に背くことを行うため、絶対命令がインプットされていないのだ。
人よりも正確で迅速な計算能力と人の何倍もある身体能力を持ち、人を傷つけることをいとわない。狂人よりもたちが悪い。
特務捜査二課はそういうたちの悪いロボット犯罪専門の部署として、去年設立されたばかりだという。
ロボット相手に人相手の装備では歯が立たないので、専用の捜査機器を研究開発する科学者も所属している。リズはそのひとりだ。
目には目をということで、ロボット捜査員の導入が協議され、リズが試作品として作ったのがオレの体なのだ。