異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
役職を得たフェティはそれまでのようにランシュをかまうことはできなくなった。それでも時間を見つけては気にかけていたようだ。
しかし時が経つに連れ、迫り来る命の終わりに焦り始めたランシュは、次第にフェティと距離を置くようになる。取り憑かれたかのように研究に没頭し、とうとう十八歳の時、違法なロボットの開発に手を染め免職となった。
免職になったもののランシュは科学技術局で生活していたので、監視は厳しくなり局内に半ば監禁状態だった。
副局長のフェティは、何度かランシュと面会し激しく叱責したようだが、ランシュが反省することはなかったようだ。
その後容態が悪化したランシュは入院となった。
公式に発表されている経歴では、この後二年間ランシュは病気の療養をしていたことになっているが、実は失踪していたらしい。
動くのもままならないほどの状態だったにもかかわらず、病院から抜け出したという。科学技術局の誰もが、そんな状態ではすぐに遺体で発見されるのではないかと思っていたようだ。
フェティもいつランシュの遺体発見の知らせが来るか気が気ではなかった。
この後二年間、フェティの日記からランシュとの出来事は姿を消す。時々思い出したように、ランシュを気にかけているだけだ。
そして二年後、再び姿を現したランシュは、遺伝子治療を受けてすっかり元気になっていた。
治療を受けた病院に実験体として監禁されるのを恐れて逃げ出してきたという。
保護を求めてやってきたお菓子屋が、たまたま科学技術局局長の妻が経営する店だったらしい。
その時からランシュは局長の養子となり、局長監督の元で科学技術局に復職した。
十年分くらいを一気に読み終えて、オレは一息ついた。極秘となっているランシュ=バージュ博士の少年時代ってずいぶんと波瀾万丈だったようだ。