異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
15.フェティ=クリネの日記《後編》
復職したランシュ=バージュ博士が、フェティの目には一回り成長したように見えていた。以前のように張りつめた様子もなく、どこか冷めていた彼が、よく笑うようになったらしい。
病気を克服したということも影響しているのだろうが、一番の要因は家族との生活だろうという。
失踪していた二年間、彼は一般人と家族のように暮らしていたのだ。生まれたときから科学技術局に閉じこもって研究に明け暮れていたランシュにとって、家族との生活は新鮮な刺激と共に、他人に対してどこか冷めていた彼の心と感情を育てたのだろう。
失踪前には目も合わせようとしなかったランシュが、戻ってきた初日フェティに笑顔で挨拶をしたことに、彼女はいたく感動していた。
病気を克服して人間の円くなったランシュは、子供の頃のようにフェティと親交を深めつつ、研究開発にも徐々に着手し始める。そして復職から七年後に、歴史に名を残すヒューマノイド・ロボット、バージュモデルを発表した。
発表会の様子や関係機関が発行した雑誌記事などがたくさん添付されていて、フェティが自分のことのように喜んで興奮している様子が文面からも感じ取れる。
関係者との写真にまぎれて、ランシュと女性のツーショット写真があった。はにかんだようなランシュと得意げに胸を反らすプロポーション抜群のブロンド美女。
え、このポーズに表情、ものすごく見覚えがある。もしかして……。
オレは手のひらの上に写真を表示してリズに尋ねた。
「この女の人って、もしかしてリズの大叔母さん?」
「え? どの人?」