異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
一週間かけて色々学んでいるうちに、自分の体にも慣れてきた。頭の中に現れる文字も今は気にならない。あれはこの体を制御している人工知能が発するシステムメッセージらしい。
そしてその人工知能を制御しているのがオレ自身だ。本来なら人格形成プログラムによって作られた人格モジュールが制御するのだが。
「シーナ、準備はできた?」
「あぁ」
突然、リズが頭の中に直接話しかけてきた。オレも頭の中で応答する。オレの頭脳はコンピュータと同じなので、アドレスを指定すれば、音声でも文字でも直接通信を行うことが可能なのだ。
「被疑者をしっかり見極めて。人間だったらあなたはそのまま待機よ」
「了解」
オレは警備会社から通報があったという建物の入り口を見下ろした。建物の中には高価な宝飾品を扱う店がある。そこへ何者かが電子ロックを無理矢理解除して侵入したらしいのだ。だが監視カメラは不審者の姿を捉えていない。
電子制御のセキュリティをかいくぐって進入したとなると、違法ヒューマノイド・ロボットの可能性が高いということで、特務捜査二課の出動となった。
出動したのはオレひとりではない。他にも人間の捜査員がビルの周りを囲んでいる。犯人が出てきたところを取り押さえるため、物陰に身を潜めていた。
犯人が人間だったらオレの出番はない。邪魔になるだけなので、離れたところからまずは相手を確認するのがオレの初仕事だ。その結果を受けて捜査員たちは動くことになっている。結構責任は重い。