異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
同居を始めたフェティとランシュの日常は穏やかに流れていく。
同居開始から五年後、科学技術局の局長と副局長が交代となった。フェティも局長も自分の研究を続けながら、要職の激務をこなすには年齢的に厳しくなってきたからだ。次の局長は二十八歳。前局長と同様に機械工学専門の科学者だ。
それなりの研究成果もあげていて統率力もある。柔和な性格で現場の局員にも親しまれていた。
ただ、前局長はフェティにだけ、密かな懸念を明かしている。新局長は武器や兵器に興味を持っていたらしい。
意外にも科学技術局に多大な貢献をしているランシュ=バージュ博士は局長に選任されたりしなかったようだ。フェティの日記から察するに、奥手な性格みたいだからか、あるいは前科者だからかは不明だが。
表だった要職には着いていなかったようだが、フェティと前局長共々、科学技術局の最高意志決定機関である幹部会には名を連ねていたらしい。
局長が交代して少しした頃、前局長の懸念が表面化してきた。
これまで文化の発展と科学の平和利用を主としてきた科学技術局が、積極的に軍の要請に応えるようになってきたのだ。
元々クランベール軍でも科学技術は利用されていた。だが主に防衛の面で、攻撃面はあまり想定していない。軍備について他国に発表はしていないが、発展した科学文化を見せつけることで、十分な抑止力になっていた。
ところが軍の言い分としては、いざというとき応戦できる兵器がなければ、国を守りきれないという。一度チョロい相手だとわかってしまえば、二度目には容赦ないだろうと。
どこかで聞いたような話だ。
軍備に関する対応は、科学技術局の幹部会でもたびたび議題に上っては意見が対立していた。