異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
この先はリズから聞いた話も時々現れる。ムートンを作ったことや、ランシュに八つ当たりしたことや。
ムートンはリズの予想通り、ランシュと一緒に作ったようだ。
だが、ここにきてハタと違和感に気づく。リズから聞いた話では一番の大事件とも言える「リズの発熱」がどこにも書かれていないのだ。
生死の境をさまよって記憶障害を起こすほどの高熱に見舞われたというのに、保護者のフェティが心配していないわけはない。
もしかして飛んでいる日付のどこかに書かれていたのだろうか。だとしたらリズが発熱した日に、なにか科学技術局に知られたくない事件があったというのは偶然? リズの記憶も日記の記述も飛んでいる以上、オレには知る由もない。
そしてバージュ博士の命の終わりがやって来た。不思議なことに彼は自分の寿命を知っているかのような行動をとっている。
始まりは養父の死。その翌日葬儀から帰ってきたバージュ博士は二日後に自分の命も尽きるだろうとフェティに告げている。フェティはそれを悲しんではいたが、否定はしなかった。
そして実際に二日後、バージュ博士は亡くなったらしい。
”らしい”というのは、彼が亡くなった現場をフェティですら見てはいないのだ。前日の深夜、ふらりと出かけて帰ってこなかった。だがフェティは彼の死を確信して受け入れている。
死期を悟ってフラッと出て行くなんて、なんか猫みたいだな。