異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
それにしてもキーワードってなんだろう。おそらく死の直前にバージュ博士は科学技術局となにか取引をしたのだろう。
そしてたぶん、人格形成プログラムのソースコードは消去されていない。どこかに隠されていて、それを得るために誰もわからないような難しいキーワードが必要なんだ。
科学技術局が家捜しをしたせいで、警戒したフェティの日記が虫食いになったせいか、余計に謎が深まった。
リズは本当になにも知らないのかな。失われた記憶の中になにかあるんだろうか。
ずいぶん幼かったから、大人の争いに巻き込みたくなかっただろうし、知らせてない可能性も高いよな。
ライセンス期限が切れる今年、まだソースコードを手に入れていないと思われる科学技術局が、リズに接触してくる可能性はある。
今のところそんな話は聞いてないけど。
オレがリズを守らなきゃ。
なにかに導かれてオレがリズの元にやってきたのだとしたら、きっとランシュとフェティの導きだ。
ふたりは残されたリズの身を心配してるだろうから。
オレが密かに決意していると、スピーカーから久々にメッセージが流れた。
——緊急指令。ラフルール商店街にてヒューマノイド・ロボットによる人質立てこもり事件発生。特務捜査二課の各捜査員はただちに現場に急行してください。
え、久々なのに、また現場急行とか。
リズはコンピュータを落として席を立ち、机の引き出しから見慣れた白いボトルを取り出した。
それをオレに突き出しながら言う。
「お昼ご飯はお預けになりそうよ。私は平気だけど、あなたは飲んでおいてね」
「ん……」
平和ボケしててすっかり忘れてた。座ってる間充電しておけばよかったな。朝食があったから少し余裕はあるけど、フルパワーのこと考えるとサプリを飲んでおかなきゃ。
オレはオレンジ色のカプセルを飲み込んでボトルをリズに返した。いつもながら味気ない。
「君もヒマがあったら飲んでおけよ」
「はいはい。ヒマなんかないけどね」
くそぅ。減らず口め。
「じゃあ、行ってくるわね。ムートン、留守をお願い」
「カシコマリマシタ」
笑顔でムートンに手を振って、リズはオレと一緒に研究室を後にした。