異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
「なんで現場にいるんだよ」
「ほら、あなたも気にかけてたじゃない。この間みたいに被疑者ロボットの記憶が消えるのを見てるしかないのは問題だから、ロボット専門の私が現場で対応することになったの。要望が受理されて法が整うまでの暫定措置よ」
「だけど……」
警察関係者とはいえ、訓練も受けていない人間が現場にいるのは危険ではないだろうか。
オレの心配を察したのか、リズはにっこり笑って隣のラモット班長を手で示す。
「大丈夫よ。ラモットさんがそばにいるし、あなたへの指示やモニタリングは向こうの通信車両の中から行うことになるから、ほぼ外には出ないわ」
現場の危険を今ひとつ理解していないリズはにこにこ笑っているが、それとは対照的に班長はいつにも増して不愉快そうにオレを睨む。
まぁ、オレがいなけりゃリズも現場にいないわけだし、リズの警護という余分な仕事が発生することもなかったわけだから気持ちはわからないでもないけど。
いつもより強力な無言の圧力が痛い。
せっかく少しは班長の信頼を得られてきたっていうのに。いや、あくまで自己評価だけど。
せめてこれ以上班長の機嫌を損ねないで欲しい。
オレはひとつため息をついて、リズの肩を叩いた。
「班長に迷惑かけないようにな」
「あなたじゃあるまいし、他人のエアバイク投げたりしないわよ」
「そうじゃなくて……」
そんな初仕事の失敗を蒸し返さなくても。
がっくりとうなだれたオレの頭の上で、班長がフンと鼻を鳴らした。
え? 鼻で笑われた?
冗談なんか余計に不機嫌になりそうな気がしていたのに。
ちょっと意外で思わず見上げると、班長と目が合ってしまった。相変わらず不愉快そうで、微妙に気まずい。
リズのつまらない冗談にうっかり反応してしまった自分が不愉快なのか、デフォルトの不愉快なのかは不明だが。