異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 見取り図によると店内はほぼ真四角な空間になっている。窓からこっそり中を覗くと、服飾店の割に商品はあまり陳列していない。通りに面したショーウィンドウにわずかに飾られているだけだ。
 入り口を入って右手の角にはリズの研究室にあった全身をスキャンするマシンがあり、その横には例のATMのような注文マシンが三台並んでいる。推測だが、全身をスキャンしたデータを注文マシンに送り、画像で試着するのだろう。
 食料品店と違い、注文までに時間がかかるからか、マシンの画面位置は低く、前には椅子が置かれていた。その椅子に女性がうなだれて座っている。人質になっている女性客のようだ。
 ちょっとラッキー。このまま俯いていてくれれば、オレが彼女の視界にはいることはないだろう。少し余裕を持って見ることができる。

 だがロボットはそばにいない。どこだろう。

 オレは集中して店内を探った。
 マシンエリアの横にパーティションで仕切られたコーナーには商品の陳列スペースが申し訳程度にあった。その奥は商品倉庫へ続く扉がある。奥にいたら人質救出のチャンスな気もするが、位置を変えてもう少し店内を探ってみる。

 いた! オレのいる窓側からは見えにくい場所で、人質と向かい合うような位置に立っている。
 見取り図によると、そこは商品受け渡しと決済を行うカウンターだ。

 もう少ししっかり見たい気もするが、奴が少し顔をこちらに向けるだけでオレの姿が視界に入ってしまう。
 見たものはすべて録画してあるし、リズがモニタリングしている。オレは班長の指示通り速やかに店を離れた。


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