異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
オレは視覚センサを暗視モードに切り替えて、各種センサの感度を上げた。夜の闇に包まれていた視界が昼間と同じようにはっきりと見えるようになる。
少しして監視していたビルの入り口に人影が現れた。見た目は作業着を着た地味な中年男性。
男は入り口前で立ち止まり、辺りを探るように、ていうかまるでスキャンしているみたいに、ゆっくりと首を巡らせた。思い切り不審だっつーの。
オレの内蔵センサが働き始める。
ターゲット確認。
生体反応なし。
ノーマルモデルのヒューマノイド・ロボットと断定。
右腕に刃渡り20センチの刃物内蔵。
左手に持った鞄の中に宝飾品を多数所持。
オレのシステムメッセージはそのままリズが傍受している。そしてそのまま各捜査員に伝えられる。 犯人がロボットということは、オレの出番のようだ。初仕事でいきなりかよ。とも言っていられない。成果を挙げなければ、オレに未来はないのだ。
さっそくリズから命令が飛んできた。
「シーナ、あなたが確保して。みんなが援護するわ」
「了解。あいつ、武器を内蔵してる。リミッター解除してくれ」
「いいわ。リミッター解除命令。パスコード69022」
マスターの命令受理。
パスコード承認。
筋力リミッター、ロック解除。
痛覚センサ停止。
全身にパワーがみなぎる気がする。
うん。気がするだけ。実際にはフルパワーを発揮してみないと実感することはない。
オレの体はフルパワーを発揮すると、弾よりも速く機関車よりも強くなってしまうのだが、普段はリミッターによって一般成人男性並に筋力が抑制されている。
フルパワーはエネルギー消費が莫大になるし、うっかり人を傷つけたり物を壊したりしてはまずいからだ。
リミッターはオレ自身に解除することはできない。マスターの唱えるパスコードによってのみ可能なのだ。
パスコードは一度唱えると無効になる。そして新たに人工知能がランダムで設定してマスターに送信している。オレ自身は蚊帳の外だ。
通常は日に一回変更されているらしい。