異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


「フルパワーで動けるのは10分間だけよ。使いどころを間違えないで」
「了解」

 十分経ったら勝手にまたリミッターがかかるのだ。それ以上フルパワーで動くと、エネルギー切れで動くこと自体できなくなるからだろう。

 よっしゃ、いくぜ!
 オレは気合いを入れて背中に背負った反重力飛行装置を作動させる。そしてビルの屋上から飛び降りた。
 十センチ四方の銀色で平たい箱状の反重力飛行装置は、エアカーと同じ原理で人を宙に浮かせる手助けをする。
 バランスをとったりするのが難しいので、訓練の末許可を受けた特殊作業に従事する者しか使用できない。
 オレは三十分で自在に扱えるようになったけどな。なにしろオレの体はコンピュータ制御だから。

 証拠はつかんでいるし、相手は人間ではないので、職務質問したり、任意同行を求めたりはしない。そもそも話の通じる相手でない場合が多いという。
 確保命令が出たら、問答無用で確保するように言われている。
 ビルから飛び降りたオレは、おっさんロボットの真後ろに着地する。そして武器を内蔵している右腕を拘束するため手を伸ばした。
 ところが捕まえたと思った腕が、瞬く間に手をすり抜けておっさんはすでにはるか前方を猛ダッシュしている。

 はえぇっ! なんだ、あいつ! てか、武器内蔵してるのに微塵も使おうとしないって。

 泥棒ロボットだから逃げ足を強化されてるんだろうか。オレはすぐさまおっさんを追って駆け出した。
 一気に加速する。

 くっそぉ〜、こんな事でフルパワー使いたくなかった。舌打ちしながら頭の中でリズに報告する。

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