異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
オレも納得した。バージュモデルって人間らしさを追求してるから、どこまで人間くさくていいのか未だに掴めていない。
ロボットらしくする方が結構難しい。
まぁ、人間くさすぎても「変なロボット」で済むんだろうけど。
シャスは納得しているというのに、リズは笑いながらさらに言う。
「もっとも、この子は特に恥ずかしがり屋なんだけどね。初めて起動して開口一番着るものを要求したのよ」
「ははっ。そういう設定なの?」
「そんな極端な設定はしてないけど、勝手に付加された個性かしら? バージュモデルは起動した直後から人格が成長を始めるの」
「へぇ」
クランベール人のシャスも、バージュモデルの細かい仕様までは知らないようで、リズの話に感心している。
おまえら本人のそばで勝手なことベラベラと……。「この子」呼ばわりか。
勝手に付加された個性で悪かったな。
着替え終わったオレは、あからさまにムッとした表情で投げやりに戸棚の扉を閉じる。
オレが諸々不愉快になっていることを知ってか知らずか、リズはにこにこと笑いながらオレの背中を叩いた。
「ほら、ムスッとしてないで。お客様の前では笑顔でね。笑ってごまかすの得意でしょう?」
そんなことシャスの前で暴露することないだろう。案の定シャスは呆れたようにオレを見下ろした。
「おまえ、班長にイヤミ言われても笑顔で首傾げてたのってごまかしてたのか」
「いやぁ、ははっ」
「笑ってごまかすな」
軽く頭をはたかれて、横目でリズを睨む。リズはにっこり笑って首を傾げた。
それはオレへの当てつけか。
くそぅ。シャスには「必殺、天使の微笑み」が使えなくなってしまったじゃないか。
オレは内心舌打ちしながら、シャスとリズと共に特務捜査二課の事務室に向かった。