異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
ぐいっと目の前まで迫った男の深緑の瞳がキラキラしてて薄気味悪いんだけど。目は黒くないんだな。
てか、顔ちけーよ!
せっかく密かに顔を退いたというのに、男はさらに顔を近づけてきた。
勘弁してくれ。おっさんと至近距離で顔突き合わせてるなんて辛すぎる。
オレがすっかり逃げ腰になっているというのに、男は興奮したようにまくし立てる。
「いやぁ、警察局の官庁向け公開情報で見たときから君に会いたいと思ってたんだよ。ホントきれいな造形だ。こんなにきれいな子が怪力を発揮するって本当?」
「えーと……」
オレのスペックって機密情報じゃなかったのか? どこまで話していいのか判断できない。
オレが悩んでいる隙に男の手はオレの頬を両手で挟んで上向けさせた。
「もっとよく見せてくれ」
「いや、ちょっと……!」
これはもう殴ってもいいだろうか。なるほど、こんな調子でロティのこともベタベタ触ったんだろうな。
確かにいやらしい下心は見えないが、人間が初対面の相手にこんなことされたら不快だってことくらいわかるだろう。
ここまで完全に物扱いされたのは初めてだ。
「あのっ!」
さすがに見かねたようにリズが男の腕を掴もうとする。それを制して二課長の静かで低い声が響いた。
「グリュデさん、本来のご用件をお忘れではありませんか?」
男は今気がついたかのように二課長と視線を合わせて、気まずそうに笑いながらオレから手を離した。
「あ、いや、どうもすみません。シーナをじっくり見てみたいと思ってたものだからつい……」
全く悪びれた様子もなく、男は二課長に向かって頭をかきながらヘラヘラ笑っている。