異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
「リズ、ごめん。取り逃がした。あいつ、すげー早い。今追ってるけど、付近の道路を封鎖してくれ」
「今やってる。あなたの視覚データはモニタリングしてるから。早く追いついて。時間切れになるわよ」
「了解」
さらに加速したとき、肩に取り付けた通信機からイヤミな声が聞こえた。
「……ちっ、使えねぇポンコツだな。グレザック、フェランド、シャス、回り込んで待ち伏せろ!」
「了解!」
全部聞こえてんだけど?
それを承知の上で悪態をついているのは、特務捜査二課機動捜査班班長ラモット=ベルジュロンだ。便宜上オレの上司になる。もっとも彼はオレを部下だとは思っていないようだが。
初顔合わせの時からあまりオレを歓迎していなかった。ロボットに何か苦い思い出とか恨みとかあるのかもしれない。
だからオレが作戦の中心を担っていることも気に入らないようだ。
彼の思惑がどうであれ、オレは黙って命令に従い作戦を遂行するだけだ。とにかく成果を挙げなければ寿命がつきるわけだから。
視界の片隅にフルパワー残り二分が点滅し始めた。
おっさんロボットは相変わらず、灯りの消えた深夜の商店街を猛スピードで疾走している。その背中があと少しのところまで迫っていた。
前方に商店街の終わりが近づいてくる。その先は官庁街になっていた。その手前で銃を構えた捜査員がふたり立っているのが見える。先ほど班長に命令されたグレザックとフェランドだ。
ふたりの構えた銃は生き物に対して殺傷能力はない。ただ、ヒューマノイド・ロボットに対しては、一時的に機能を停止させてしまう能力がある。
オレの体は銃の攻撃に耐えられるように、特別に防護されているらしい。
破壊してしまわないのは、メモリやプログラムを生きたまま回収してマスターを特定するためだ。本当の被疑者はロボットではなく、それを利用している人間だから。