異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 ロボットがいなくなったことで、科学技術局内は騒ぎになっていたらしい。警察に通報すれば騒ぎになるし、絶対命令があるので外に出たとしても事件を起こすことはないだろうと、自分たちで捜していた。

 お国の機関の隠蔽体質はどこも一緒だな。

 ところが事件は起きてしまった。ロボットから発せられた通信をたどってみれば、警察と野次馬に取り囲まれて黒山の人だかり。こっそり回収しようにも、手も足も出ない。

 連絡を受けたグリュデ氏は、ロボットが何をしでかしたのか確認するために警察局にやってきたという。

 現場を指揮していたラモット班長とガリウス班長に説明を受け、事情聴取を受けていた店主と人質女性にも謝罪し、話を聞いたらしい。

 彼女の証言によると、彼女が事件のあった店に入ってまもなく、いつの間にか後ろにいたロボットが、突然彼女を抱き抱えるようにして、店の中にいる人間はすべて外に出るようにと告げた。
 無表情で一言も口を聞いてなかったけど、あいつ一応しゃべれるんだな。

 店内にいる人数を把握するために店には大概探知機が設置されている。人とロボットを判別しているので、相手がロボットであることを店主にはすぐにわかった。
 犯罪を起こすロボットは何をするかわからない。話が通じる相手ではないので下手に刺激しないようにと警察局から全国民へ広報されている。
 店主はおとなしくロボットの要求に従い、店内にいた客と従業員を連れて店の外に出た。

 店の中に取り残された人質の彼女は、半狂乱でロボットの腕をふりほどきながら「放して!」とわめいたらしい。
 すると意外なほど素直にロボットは腕をほどいたという。

 ロボットから逃れた彼女は店の隅にある注文マシンのそばまで退いた。店の出入り口にはロボットの方が近い。店を逃げ出そうとしても捕まってしまうと思ったという。

 ロボットは無表情なまま彼女の動きを目で追い、ゆっくりと歩み寄ってきた。恐怖に駆られた彼女は「近寄らないで!」と叫んだ。するとまたしても、ロボットは歩みを止め、ゆっくりと決済カウンターの前まで後退したという。
 注文マシンの前に置かれた椅子に座った彼女を、ロボットは感情のない瞳でじっと見つめたまま立ち尽くしている。その目が怖くて彼女は俯いた。
 外に出た店長が警察に知らせてくれることを信じて、彼女は静かに助けを待った。

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