異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
事件の詳細はそんなところだったらしい。だが、未だにロボットの行動は色々と腑に落ちない。
絶対命令がインプットされているなら、どうして立てこもり事件なんて犯したのだろう。
オレだけでなくリズも二課長も怪訝な表情を浮かべている。
グリュデ氏の話は尚も続いた。
「いやぁ、人質になっていた女性に面会したときは驚きました。彼女はあのロボットの教育担当にそっくりだったんですよ」
「あぁ、それで」
リズが納得したように頷く。それに同調してグリュデ氏も頷いた。
「えぇ。あのロボットはまだ開発途中だったんで、人の個体識別の精度が低くて、大雑把な容姿でしか判別できないんです。局の外に出たもののどうしていいかわからず、教育担当によく似た彼女の後についていったんでしょう」
なるほど。それで彼女の言うことを聞いたのか。彼女を見つめてじっと立ち尽くしていたのは、彼女の命令を待っていたのかもしれない。
オレが飛び込んだときも飛散するガラスの破片を浴びながら、あいつはその場から動かなかった。「近寄らないで」という彼女の命令を忠実に守って。
ガラスの破片が彼女を傷つけることはないと、オレが計算したように、あいつもわかっていたからだろう。