異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
リズがもうひとつ腑に落ちない点を尋ねた。
「彼女を教育担当と間違えてついて行ったのはわかりますが、どうしていきなり立てこもったんでしょう」
「私も何かきっかけがあったんじゃないかと思って彼女に尋ねたんですよ。店に入った直後に何か言いませんでしたかって」
「何か言ったんですか?」
「えぇ。あの店には注文用の機器が三台あるんですが、それが全部使用中でふさがってたらしいんですよ。それで”あぁ、早くみんな出て行ってくれればいいのに”って、つぶやいたそうです」
えぇっ!? それを命令だと勘違いしたのか、あいつ。
てことは、ロボットからしてみれば「みなさん、早く店を出て行ってください」とお願いして、彼女の命令を待って動かなかっただけで、立てこもりの意思はなかったわけだ。
そりゃあ、法の順守という絶対命令には反してないよな。
なんか一気に脱力した。二課長もリズも真相を知って大きなため息をついている。
あ、でも、あとひとつ——。
「あのロボットは私に取り押さえられた直後、私の登録情報をスキャンして科学技術局に送信しています。それはなんのためですか?」
オレの質問にグリュデ氏は柔和な笑みを浮かべて首を傾げる。
「さぁ……。それは私にはわからないよ。今君たちに話したことも私の推測でしかない。私はあのロボット本人ではないからね」
タヌキめ。こいつやっぱり信用できない。
なにしろ最初から、ちっとも感情が読めないのだ。何かオレのセンサを妨害する装置を身につけているとしか思えない。
バージュモデルを世に送り出した科学技術局だから、バージュモデルの特性は熟知しているはずだ。
グリュデ氏は話が済んだと判断したのか、席を立って笑みを深めた。
「心配しなくても君の登録情報は私が責任を持って局のコンピュータから削除しておくよ」
そう言ってグリュデ氏は、二課長とリズに挨拶をして警察局を後にした。