異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
オレはゆっくりと手を離す。リズはうなだれて目元に指先を当てた。
「悪かったって。泣くことないだろう」
そう言って頭を撫でると、オレの手を払いのけてリズは勢いよく椅子から立ち上がり、クルリと背中を向けた。
「泣いてないわよ!」
涙声でわめきながら鼻をすすっている。泣いてんじゃねーか。思わず呆れたように尋ねた。
「オレの顔って泣くほど怖い?」
「怖いわけないじゃない、私が作ったのに。怖いんじゃなくて、ああいう雰囲気が苦手なの! どうしていいのかわからなくなるんだもの」
はぁ、なるほど。オレにとってはおっさんとの気持ち悪いシチュエーションだったけど、リズにとっては王子様との萌えシチュエーションだったってわけか。
「じゃあ、キスでもすればよかった?」
反射的に茶化すと、ものすごい勢いでリズが振り向いた。顔は真っ赤で目が潤んでいるのは変わらないけど、表情は鬼のようだ。検知した怒りの感情が急上昇。
マジやばい。これは「命令」がくる。
「ふざけないで、エロボット! シーナ、命令よ!」
「わぁっ! 待った待った、痛いのは勘弁! 悪ふざけが過ぎました。申し訳ありません、ご主人様!」
情けないほどあっさりと、オレはその場に正座して床に額をつける。
土下座ってクランベールで通用するのかわからないけど、こんな至近距離でケーブルに繋がれているのに、あの痛い命令は勘弁してほしい。
少しの間待ったがリズの命令はない。恐る恐る顔を上げると、まだ不愉快そうに見下ろしている彼女と目が合った。かなり気まずい。
食らえ! 必殺、天使の微笑み!
極上の笑顔を作ってみせると、リズはフンと鼻を鳴らしてプイッと横を向いた。
どうやら痛い命令は回避できたらしい。