異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
やばい。このままでは初日にパニック起こしたときみたいに、身体制御がロックされる。そうなったら、動揺していることをリズに気づかれてしまう。
落ち着け、オレ! 思い過ごしだ!
感情に支配された思考回路をいくつか強制的に停止させ、人工知能の負荷率を下げる。ようやく安定してきたところで、オレはホッと一息ついた。
本当にオレの思い過ごしならそれでいい。たとえそうじゃなかったとしても、気づかなかったことにしよう。今後のリズの人生と幸せを守るためなら、その方がいい。一年後にオレが生きている保証はないんだし。
見上げるリズの瞳を見つめて、オレは決意を告げた。
「オレはただのロボットだよ。もう二度と悪ふざけはしない」
「そう。いい子ね」
わざとらしい慈母の微笑みをたたえて、リズはオレに頷いてみせる。そして何食わぬ顔でコンピュータ画面に視線を戻した。
彼女が落胆しているのは丸わかりだが、こちらも何食わぬ顔でまじめな話題を振る。
「あの科学技術局の局長だけど、手放しに信用しないほうがいいよ」
「どうして?」
「見かけは友好的だったけど、本当かどうか感情が読めなかった」
「あなたのセンサを遮断してたのね」
「たぶん」
バージュモデルが感情を読めることは、人とロボットとの円滑なコミュニケーションのために必要な機能として公開されている。
考えている内容までわかるわけではないので、これを嫌がるのはよほど神経質な人かロボット嫌いかのどちらかだ。あるいはなにか後ろ暗いところのある人か。
あのおっさんは十中八九「後ろ暗いところのある人」だろう。色々と胡散臭い。多分に偏見も含まれてるけど。
「じゃあ、一応、二課長に報告しておくわね」
そう言ってリズは、再びオレのデータ分析に戻った。