異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
明かりの消えたリズの研究室が、今日はひときわ寂しく感じられる。リズは少し前にムートンとオレに挨拶をして帰って行った。
オレは部屋の隅に座り、ムートンと並んで電源プラグに繋がれていた。そろそろ省電力モードに切り替えないと、朝までに充電が完了しない。けれど思考回路が停止しないのだ。
強制的に停止させればいいんだけど、胸の奥にリズの傷ついた感情が引っかかっていて、気になってしょうがない。
ムートンはリズと挨拶を交わした後、すぐに省電力モードに切り替わった。いつもは青く輝いている目も今は灯りを落として黒くなっている。
返事がないことはわかっていながら、オレはムートンに話しかけた。
「おまえ、リズが好きだよな。リズもおまえが大好きだよ」
ムートンには感情がない。けれど、リズに充電を要求するときの彼は、リズの目には甘えているように見えているのだろう。
「オレもリズが好きだよ。だけど……リズがオレを好きになっちゃだめなんだ。オレはただのロボットなんだから」
本当にただのロボットだったら、彼女を傷つけることもなかったんだろうけどな。
ムートンと同じように、リズの想いをすべて受け止めることができたのに。
つまらない悪ふざけでリズの心を翻弄して、挙げ句の果てに傷つけた。自己嫌悪で思わず盛大なため息が漏れる。
もうしばらく眠れそうにない。いや、元々眠ってはいないけど。
オレはかかえた膝の上に顔を伏せて、もう一度派手にため息をついた。