異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
班長は相変わらずオレなんかいないかのように、黙々と事務仕事を続けている。
身体的に疲れることはないけど、精神はめっちゃ削られてる。
どうせすることもないなら、いっそ省電力モードに切り替えようかと思い始めたとき、班長がおもむろにこちらを向いた。思わずピクリと反応したオレを見て、思い切り不愉快そうに眉をひそめる。
「いちいちビクつくな。オレの方が落ち着かない」
やばい。気づかれてた。
「すみません。なにかご用かと思って」
「事務室でおまえに頼むような仕事はない」
「そうですか」
うーん。班長の中では、オレってあくまでも機動捜査用の備品なんだな。教えてくれれば大概のことはできるんだが。しかも人より正確に。
いつものように天使の微笑みで応対する。
「事務仕事もできますよ」
「いい」
そう言うだろうとは思った。
すぐに目を逸らして仕事に戻るのかと思ったら、班長はそのまま問いかけた。
「おまえ、いつも研究室ではなにをしてるんだ?」
「研究室に常駐してるロボットと話をしたり、クランベールのことを学ぶために国立図書館の蔵書を閲覧したりしてます」
「だったら、そうしてろ。室内にいるときまでオレを監視してなくていい。その方がお互い落ち着くだろう」
「了解しました」
やった。読書の許可が出た。ダメ元で聞いてみようとは思ってたんだ。
オレが国立図書館にアクセスしようとした途端、本日二度目に聞くあのメッセージが流れた。
——緊急指令。第一居住地区にて、捜査員銃撃犯と思われるロボットの目撃情報。特務捜査二課の各捜査員は直ちに出動してください。
班長が即座にコンピュータの操作を終了して立ち上がる。オレも一緒に立ち上がった。
「行くぞ。リズを呼べ」
「了解しました」
今日はオレも班長と一緒に出動だ。班長は早速通信でシャスとフェランドに指示を出している。
図書館の蔵書閲覧はしばらくお預けになってしまった。