異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
リミッターが解除され、車に乗り込もうとしたリズの足下に動物型ロボットがすり寄ってきた。
見た目は毛の短い猫に似ている。けど柴犬くらいの大きさがある。ロボットだからなのか、元々こういう生き物を模しているのか、オレはまだ勉強不足でわからない。
金に近い明るい茶色の毛並みに覆われたスリムなボディ。細長いしっぽをゆらゆらと揺らしながらリズを見上げる瞳が赤く点滅している。そこが唯一ロボットっぽい。
案の定リズは瞬時に虜となって、猫ロボットの前にしゃがみ込んだ。
「かぁわいい〜。どうしたの? 迷子になったの?」
リズに頭を撫でられ、猫ロボットは嬉しそうに目を細めて小さく「にゃあ」と鳴く。
やっぱ猫っぽい。しかもかなりリアル。ただ大きさが違和感ハンパない。
飼い主っていうか、主はこのあたりの貴族なのかな。その割にはつけている首輪がえらく庶民的なんだが。
見かけも庶民的だが、材質やその価格帯が庶民的お手頃価格だったりする。
リズは迷子のロボットだと思いこんでるようだが、班長のまわりに現れた不審物には違いないので、オレは一応チェックしていた。
リズはにこにこと猫を撫でながらオレを見上げる。
「ねぇ、後で遺失物係に届けるから、とりあえずこの子も一緒に車に乗ってていい?」
「いいわけないだろ、そんな不審物。事件現場なんだぞ、ここは」
リズはハッとしたように表情を引き締めて立ち上がった。
「そうだったわね。ごめんなさい」
あまりに素直に謝られて、ちょっと罪悪感に駆られる。なにしろリズはオレのマスターだし、下僕がマスターをたしなめるなど、偉そうだったかなって。
それに猫と楽しそうにしているのに、水を差したのもかわいそうだった気がする。