異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
爆発物処理班を見送ったあと、リズはオレの元に戻ってきた。表情はすでにいつもの科学者になっている。
「シーナ、背中見せて」
「ん……」
後ろを向いたオレの背中で、リズの細い指先が傷を撫でる。感覚まではなくなっていないみたいだ。周りの皮膚が感じてるだけなのかな。
前から気づいていたけど、痛い目にあってもその時だけで、人間のようにいつまでも引きずったりはしないようだ。その方がありがたいけど。
「ひどくやられたのね。かなり危なかったんでしょう?」
「耐久率三十五パーセントまで低下した」
データを回収されればわかることだから正直に告げる。リズは手を離して抑揚のない声で静かに言う。必死で感情の昂ぶりを押さえようとしているのがわかる。
「あなたの目が赤く点滅してたから危険な状態にあることはわかってたの」
へぇ。警告モードの時って、外からはそんな風に見えてるんだ。
「同じところを何度も攻撃されてたし、データを見ないと詳しくはわからないけど、ラモットさんが言うには、あのロボットの銃も出力が上がってたみたいだし、どれだけ耐えられるか私にはわからなかった」
「そっか。やっぱりあいつパワーアップしてたんだ。でもさ、オレの意思で動けないのはわかるけど、どうして微動だにしなかったんだろう。少し照準を逸らせれば一カ所にかかる負荷は減らせたんじゃないか?」
「人工知能を守るためよ。あなたの頭脳は胸に入ってることは知ってるでしょう? もしも強化皮膚が破壊されても人工知能に損傷がないように計算して背中を向けたはずなの。少しでもずれたら人工知能がダメージを受けていたかもしれないわ」
げっ! それはやばい。
あいつもロボットだから、オレの頭部を狙っても効果がないことは知ってただろうけど、もしかして頭脳を狙ってたのかな。オレの人工知能が停止すれば、耐久率もぐんと下がるし、もっと短時間で猫を破壊することもできる。想像しただけでぞっとした。