異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
リズはオレの背中に頭をつけて、震える声で告げる。
「ごめんなさい。ラモットさんを守るのがあなたの仕事なのに、私が邪魔しちゃった。私が取り乱して”シーナが壊されちゃう”って騒いだから、ラモットさんはあなたを助けるために危険を承知で車を降りたの。彼の命を危険にさらしたのは私なのよ」
「君のせいじゃないよ。みんなが到着するまでオレがもたないかもしれないって判断したから、一番近くにいた班長が動いたんだよ。オレが壊されたら大変なことになるから」
「でも……」
まだ納得してないのか、リズの心は晴れない。
オレは振り返り、少し腰を屈めながら俯いたリズの顔をのぞき込んだ。
「現場では咄嗟の言動がその後の展開を大きく左右するんだ。オレにはまだまだそんな判断力はないけど、班長はずっと現場でその判断力を磨いてきた人だ。そんな班長の判断は今回最良だったとオレは思うよ。実際にオレも班長も爆弾猫も無事だっただろ? 君はむしろ班長に最良の判断材料を与えた功労者だと思う。いつもみたいに胸張っててよ」
そう言って頭を撫でると、リズはようやく顔を上げた。自信なさそうに揺れる瞳がオレを見つめる。
食らえ、天使の微笑み!
極上の笑顔で見つめ返しながら、オレはもう一度頭を撫でた。
「大丈夫だって、ドンマイ」
リズの目が一瞬大きく見開かれる。それと同時に彼女の体がピクリと跳ねた。
鼓動が早くなり呼吸数も増す。脳波が異常を示す波形を刻み、次の瞬間にはすべてが正常に戻った。
リズはゆっくりと目を閉じ、ひざから沈むようにその場に崩れていく。
「リズ!」
倒れかかった体をオレは慌てて抱きとめた。
生体情報はすべて異常なし。ただ意識だけがない。
なにがどうなっているのか、なにをどうしていいのかわからず、オレは通信で班長を呼んでいた。