異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
23.静かな始まり
一足先に警察局に戻ったオレは、定位置に座ってムートンがパズルに興じている姿を見るともなしに見ていた。
ようやく空が白み始めた早朝に、リズは目を覚ました。ぐっすり眠って疲れもきれいにとれたから家に帰ると言う。
一応家まで送って、オレだけ先に警察局に帰ってきたのだ。女の身支度は時間がかかるかららしい。
研究室を出るときにはリズの許可がいるけど、戻るときには許可がいらないのだ。なにしろオレは警察局の備品だから、持ち出しの方が厳しく制限される。入場には人間と同じように登録情報の確認と身体検査ゲートはくぐってるしな。
他にロボット捜査員はいないから、警備員にも認知度は高いし。
昨日の今日なので、二課長もリズがゆっくり出勤することを承知している。
オレは背中の傷を修理するまで現場には投入されないことになった。皮膚だけなので身体機能には問題ないけど、傷を狙われたら今度こそヤバいからだ。
穴の空いた制服は帰ってきて事務室に顔を出したときシャスが新しいのをくれたので、すでに新品に着替えている。
たぶん班長が手配してくれたはずだから笑顔で礼を述べると、相変わらず不愉快そうに横目で見ながら頷いただけだった。
班長のこういう反応はもう慣れてしまったけど。
そのあとは研究室に戻って、ムートンの隣の定位置に座っている。
午前中のこの時間、ムートンとふたりきりなのは珍しい。彼がパズルのピースをいじるカチカチという微かな音だけが部屋の中に響く。