異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
頭の中をめまぐるしくデータの羅列が流れていく。対象を絞ったせいか、すぐに目的のデータは見つかった。
ピックアップされたデータが目の前で点滅する。
14:22:30 退出 特務捜査二課研究員 レグリーズ=クリネ
退出データしかない。どうやらリズは局内にはいないようだ。
誰にも告げずいったいどこへ? なにをしに?
オレは同時刻頃の監視カメラの映像に検索対象を切り替えた。
正面玄関とホールがピックアップされ、八倍速でめまぐるしく人が行き交う。唐突に通常速度に戻った画像の中心には小走りに玄関をくぐり抜ける赤毛の女性、リズがズームアップされた。
白衣を羽織ったまま何かにせき立てられるように駆け出していく。
なにがあったんだろう。
監視カメラを順次切り替えながら、リズの動きを逆戻しにたどる。リズは局を出る直前、局内にある売店にいたようだ。注文マシンの前で少しの間呆然としている。その横に黒いスーツを着た男がフレームインしてきた。
こいつか!
逆回しで正面玄関側から現れ、リズの後ろで立ち止まり、少しの間言葉を交わしていたようだ。そして売店の奥に消えていった。
オレはコマ送りで男の動きをリピート再生する。売店の奥から現れて、男はリズに声をかけた。少しズームアップしてみる。
名前を呼ばれたのだろう。リズが弾かれたように男の方を向く。だが知らない相手のようだ。リズの表情が困惑している。
男が何か話しかけた。なにを言われたのか、困惑していたリズの表情は次第に堅くなっていく。
その後少しして、男は正面玄関の方に向かって立ち去った。時間にしてわずか五分あまり。
男が立ち去った後、リズはしばらくその場に立ち尽くして男の向かった方向をぼんやり見つめる。やがて男の後を追うように正面玄関に向かって駆け出した。