異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 市街地の随所には警察局が設置した防犯カメラがある。さすがに民間の建物内にあるコンピュータには警察局といえども無許可でアクセスするわけにはいかない。警察局長官の許可と民間の承諾が必要になる。
 そっちは少し時間がかかるだろう。

 オレが二課長との通信を切ろうとしたとき、頭の中に直接通信が入った。

 相手は……リズ!?

「二課長! リズから通信です。そのまま聞いていてください」
「わかった」
 二課長との通信回線はそのままに、オレはリズの通信に応答する。

「リズ! どこ行ってんだよ」
「ごめんなさい。ちょっと用事があって出かけてるの」

 声の調子はいたって冷静で、無断で外出しているのにまったく悪びれた様子もない。
 人工知能がぬかりなく本人確認をする。

 声紋は一致。人工的に加工された形跡もない。
 てことは本人に間違いないのだろう。
 だが、あまりに落ち着き払った様子が、かえって不自然に感じる。音声通信では生体情報が得られないので、オレにも感情が読めない。
 リズが事件に巻き込まれている可能性は捨てきれないので、ちょっとした騒ぎになっていることは伏せておく。

 とにかく会話を長引かせよう。おそらく二課長が逆探知してるはずだ。
 オレは少し迷惑そうに尋ねる。

「今日は直帰ってこと?」
「そうね。もう少しかかるから、そっちには帰れないわ」
「ムートンとトロロンは君の命令がないと休めないんじゃなかったっけ?」
「そうだったわね。あなたの内蔵スピーカーと通信回線を繋いでくれる?」
「了解」

< 200 / 285 >

この作品をシェア

pagetop