異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
オレを含むヒューマノイド・ロボットはふだん対面で人と会話しているとき、発声と連動して口が動いている。
人間と違って口の動きやのどが発声しているわけではないので、口を動かさなくてもしゃべることはできるのだ。実際、音声通信のときは通信回線に繋いで声だけを送信している。
これを逆に利用すれば、通信相手の声をオレの発声器官であるスピーカーから発声することもできるというわけだ。
「繋いだよ」
「ありがとう。少し口を開いてあなたは黙っててね」
言われたとおりに少し口を開くと、オレの口からリズの声が流れた。
「ムートン、掃除が終わったら休んでいいわ。トロロンもおやすみなさい」
逆接続したのは初めてだけど、自分の口からリズの声が出るのはなんか気持ち悪い。
トロロンはオレの顔を見上げて「にゃあ」と鳴いた後、丸くなって動かなくなった。省電力モードに切り替わったらしい。
掃除機を押して部屋を行き来していたムートンも、青い目玉を点滅させながら「カシコマリマシタ」と答えた。
オレの口からだけど、間違いなくリズの命令として認識されたようだ。
「ちゃんと伝わった?」
「うん」
「そう。じゃあ、元に戻して」
「了解」
スピーカーとの接続を切ってそれを報告すると、リズがおずおずと尋ねてきた。
「あの……シーナ、今ひとり?」
「ムートンとトロロンはいるけど、他にはだれもいない」
てか、リズの許可がなければ、オレは扉を開くこともできないんだから、誰かを招き入れることなんてできない。