異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


「そう……。あのね、今からあなたのシークレット領域に地図を送るから、そこへ来てくれる?」
「はぁ? 君の許可がないとオレ、ここから出られないんだけど」
「許可するわ。シーナ、命令よ。誰にも知られないように地図の場所に来て」

 しまった。二課長と話をする前に命令に阻止されてしまった。

 オレの意志とは関係なく、人工知能がオレの口を使って返事をする。

「了解しました。マスター」

 そして勝手に二課長との通信を切断した。
 すぐにオレのシークレット領域に地図が送られてきた。マスター以外に閲覧不可の領域だ。これを二課長が閲覧することはできない。
 でも制服のまま外をうろついたら目立つんじゃないかな。それを見透かしたようにリズが言う。

「あなたがいつも着替えに使っている戸棚に私服が用意してあるわ。それに着替えて、なるべく早く来てね」

 そう言ってリズの通信は切れた。
 二課長はすべて聞いていたはず。そしてオレが話をできなくなったことも知っているはずだ。

 十分に時間は稼げただろう。地図がなくてもリズのいる場所を二課長はわかっているはず。いつもと明らかに違うリズの言動から事件性も認知していると思う。

 オレは席を立ち、リズが指示した戸棚に向かう。ムートンは掃除を終えていつもの定位置に佇み、省電力モードになっていた。窓の外は夕闇が迫り、薄暗くなっている。

 今日はリズがいないので、はばかることなく制服を脱ぎ捨て、戸棚の中に用意されていた私服に着替えた。
 以前シャスに借りた服は、大きすぎてあちこちだぶついていたが、リズが用意した服はシャツもズボンも靴までサイズがぴったりなことに感心する。
 ジャケットまで用意してあったので、ついでに着ていこう。

 脱いだ制服とブーツを戸棚に押し込んで、オレは研究室を出た。

< 202 / 285 >

この作品をシェア

pagetop