異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
廊下に出て少し歩いたとき、向こうから手を振りながらシャスがやってきた。
やばい。いきなり「誰にも知られず」という命令に抵触する。
だが、ここで走って逃げたりした方がよけいに印象づけてしまうので、そのまま何食わぬ顔でオレも会釈する。
そばまで来たシャスは平然と話しかけてきた。
「シーナ、出かけるのか?」
着替えてるから、そう思うよなぁ。
オレはいつも通り天使の微笑みでごまかす。
「うん、ちょっと。買い物頼まれて」
「そっか」
リズが出不精なのはみんな知ってるから、おかしくないよな。
オレの言葉は発声される前に、人工知能から命令に反していないか厳重にチェックされるのだ。おかしくなかったってことだろう。
シャスはにこにこしながら、手にした飛行装置を差し出した。
「ほら、この間壊れちゃっただろう? 新しいのが支給されたから」
「うん。ありがとう」
なんだろう。飛行装置は事務室に保管されてるのに、わざわざ届けに来てくれるなんて。
そこまで考えてぴんときた。二課長の配慮だ。
リズの命令を二課長は聞いていた。敵陣に乗り込むオレの装備を補強してくれたのだろう。