異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
広い室内には窓際に大きな机があり、その横に局長のグリュデが立っていた。オレを見るなり嬉しそうに目を輝かせる。
以前ベタベタ触られた記憶が蘇り、背筋に悪寒が走った。……ような気がした。
「やぁ、シーナ。また会えて嬉しいよ」
「こちらこそ。お目にかかれて光栄です」
ひきつりそうになる笑顔を必死に整えて、一応社交辞令。リズを奪還するまでは猫かぶってないと。
グリュデはにこにこ笑いながらオレに手を差し出す。
「この間はあまり話せなかったからね。今日はゆっくりと君の優秀な言語能力を見せてもらいたい」
「申し訳ありません。私はマスターを迎えに来ただけなので、ゆっくりお話をしている時間はありません」
ていうか、おまえと話すことなんかないし。それより、ご歓談中なはずのリズがここにいないことの方が気になる。
「私のマスター、レグリーズ=クリネはどこですか? こちらにいると伺ったのですが」
グリュデは芝居がかった調子で、小馬鹿にしたような苦笑を浮かべ、目を伏せて首を振る。
「やれやれ。君はマスターへの依存度が高すぎる傾向にあるようだね。感情や好感度を持つバージュモデルにはよくある傾向だ。もっとマスター以外の人間とも交流した方がいいよ」
はいはい。うるせぇよ。だからおまえとゆっくり話をしろってか?
と内心思いつつも、オレはにっこりと天使の微笑みで躱す。話を逸らされてたまるか。
「助言ありがとうございます。今後はそうしようと思います。で、リズはどこですか?」