異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました



 暴れていたリズがピタリとおとなしくなった。
 よし。少しは頭が冷えたようだ。

「二課長はだいたいの事情を知ってる。今特務捜査二課のみんなが動いてくれてるはずだ。ひとりで抱え込まずにみんなを信じて、オレに正しい命令をしてくれ」

 オレは唇と両腕を離してリズを解放する。すぐにリズが背伸びをしながらオレの首に両腕を回して耳元で小さく囁いた。

「リミッター解除命令。パスコード00071」


 マスターの命令受理。
 パスコード承認。
 筋力リミッター、ロック解除。
 痛覚センサ停止。


 視界の隅にフルパワー残り時間が点灯する。
 すげぇ! 三十分に増えてる。

 オレは頬を寄せて、再び骨伝導でお伺いを立てた。

「この手錠、壊してもいい?」
「私の責任において、許可するわ」
「ありがとう」

 許可なく物を壊すのは罪になるから、絶対命令が働いて阻止されてしまうのだ。

 目下の憂いはなくなり、オレはリズと共にグリュデと対峙する。グリュデはからかうようにオレに尋ねた。

「熱烈なお別れの挨拶はもう済んだのかな?」

 お別れじゃねーし。まぁ、そう思っててくれてかまわない。
 とにかく今はここからどうやって抜け出すかの方が問題だ。
 黙ってグリュデを睨みながら、オレはセンサで室内の粗探しをしていた。

 背後の扉は電子ロックされている。正面のガラス窓は強化ガラスの嵌め殺し。
 オレの頭脳をもってすれば電子ロックの解除は簡単だが、そんな犯罪行為は絶対命令に阻止される。同様に強化ガラスを叩き割ることもできない。
 特に建造物の破壊は所有者の許可が必要なのだ。

 くそぅ。相変わらず、絶対命令ってウザい。

 リズを守るためなら物を壊したとしても絶対命令に邪魔されることはないんだろうけど、それでリズを危険な目に遭わせるわけにはいかない。

 グリュデが壊していいなんて言うわけないし。二課長が動いてくれるまで打つ手はないのか。

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