異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
でもリズがとばっちりでケガでもしたらマズいので、オレは上着を脱いでリズの頭からかける。そして上着に包んだリズの体を抱き寄せた。
「こーんなかわいいマスターがいるのに、誰が変態おやじの下僕になるかよ。オレのマスターは生涯レグリーズ=クリネただひとりだ」
グリュデの頬がピクリと震える。おぉ、益々怒りのゲージが上がったらしい。だが、あくまで冷静さを装って、静かに恫喝する。
「君の考えはよくわかった。だが私は君を帰すつもりはないよ。人格形成プログラムのソースコードは科学技術局の資産だからね」
「オレとリズが帰らなければ、いずれ警察局が正式な令状を持って捜索にやってくるよ」
「どうやって警察局は君たちがここにいることを知るんだね?」
「知らないと思ってたのか?」
グリュデは一瞬絶句した後、口の端でフッと笑った。
「なるほど。マスター命令に背けるはずはないから、だとすると君は相当に状況判断能力も優れているらしい。益々欲しくなった」
だから、絶対ごめんだって!
人間だったら間違いなく鳥肌立ってる。
「取引をしようじゃないか。君の全力を見せてくれ。君が勝ったら帰してあげよう」
バカか。人間相手に全力どころか、デコピンすらできないんだぞ、オレは。
それはグリュデも承知していたらしい。呆れて見つめるオレに追加の条件を提示してきた。
「私が相手ではフェアじゃないからね。君の相手は彼がつとめるよ」
グリュデが指し示す先には、無表情なヴァランが控えていた。相手が変わったところで、人間だったら同じ……。
あれ? 生体反応が消えている。まさかこいつ、オレと同じように人間のふりができるロボット!?
無表情だったヴァランが微かに笑みを浮かべる。
「全力の君と戦えるなんて光栄です、シーナ」