異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
オレが方針を固めたとき、ヴァランが静かに問いかけた。
「来ないのですか?」
そんな挑発には乗らない。そもそもオレ、前世は殴り合いなんかしたことない平和主義だし。
「では、こちらから行きます」
そう言ったとほぼ同時に、ヴァランの拳が目の前に迫っていた。
早っ!
オレは咄嗟に両腕を交差させて受け止める。手首に残っていた手錠の残骸が砕けて床に落ちた。
威力も半端ない。これまともに受けてたらこっちの耐久力がもたないかも。
ヴァランは満足そうに目を細めて、一旦腕を引いた。そう。満足そうに。あの冷たいアイスブルーの瞳に初めて感情が宿ったのを見た気がする。
楽しそうに目を細めたまま、ヴァランは息つく間もなく次々に拳を繰り出してくる。当たるとやばいので、それを前後左右に躱した。反応速度はオレの方が少し優れているようだ。
口を動かす必要もないので、オレは音声通信で話しかけた。
「なんか楽しそうだな」
「楽しいですよ」
「そんなにオレを壊したいわけ?」
「そんなわけないでしょう。壊してしまっては私の楽しみが終わってしまいます」
なんだ、そりゃ?
「楽しみって?」
「私は兵士として戦うために作られました。けれど未だにその機会は得られていません。用なしで廃棄処分になってもおかしくない私に、秘書の仕事を与えてくれた局長には大変感謝しています。でもこうして戦うことが、私の本来の役割です。本領を発揮できるから楽しいんですよ」
そうか。以前リズから人間は誰かに必要とされていたい生き物なんだと聞いたが、感情のあるロボットも同じなんだな。人のために働くことにロボットは喜びを感じているんだ。