異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
「なるほどね。だから黙ってたのか」
「何をですか?」
「オレとリズの会話、聞こえてたんだろ?」
ロボットなら聴力の感度を上げれば、骨伝導のオレの声はともかく、リズの声は聞こえたはずだ。リズがオレのリミッターを解除したことを。
「えぇ。楽しくなりそうな予感がしたので」
にっこりと微笑みながらも、ヴァランは攻撃の手を休めない。オレも避けるのに慣れてきた。
当たればやばいんだろうけど、当たる気がしない。経験不足からなのか、手加減しているのかはわからないけど、攻撃が単調なのだ。
「逃げているだけでは勝てませんよ」
挑発するようにヴァランが指摘する。
確かにその通りだけど。
攻撃に移る前にヴァランの耐久力ってどのくらいなのか、ちょっと気になる。
確かめてみるか。
ヴァランの拳を躱してオレは腰を落とし、そのまま滑り込むように背後に回った。そして床を蹴って飛び上がりながら、首筋に思い切り回し蹴りを食らわす。
だがヴァランは微動だにしなかった。だいたい予想はしてたけど、ここまで頑丈だとは。てか、これまずかった。オレ、ピンチ。
すかさず足首を掴まれ、そのまま勢いよく放り投げられた。背中から大きな執務机に叩きつけられ、机が無惨に砕け散る。
生身じゃなくてよかった。これ絶対痛いし、絶対死にかけてる。
などとのんきに考える暇も与えず、目の前に楽しそうなヴァランが迫っていた。本当にオレを壊す気はないのか疑わしくなってくる。
反射的に体を起こして跳躍する。そして殴りかかろうと前のめりになっていたヴァランの頭上を飛び越えて背後に着地した。
今度は背中の真ん中に、体重をかけて肘鉄を食らわす。バランスを崩したヴァランは、机の残骸に倒れ込んだ。