異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
よし! 今のうちに拘束してしまえばこっちの勝ちだ。逮捕術はオレの本分だしな。
ダッシュで駆け寄り、腕を捕まえようとした瞬間、ヴァランが体をひねってこちらを向いた。そしてオレの顔めがけて拳を突き出す。
やべぇっ!
すんでのところで躱し、一気に後ろへ飛び退く。ゆっくりと立ち上がったヴァランは、一層嬉しそうに目を細めた。
「反応速度が私の想定以上ですね。力と耐久力は私の方が若干上回っていますが、なかなかのものです」
結構冷静に分析してやがる。さすがはロボット。分析結果はオレと一緒だ。
おまけにやっぱりケロリとしてるし。さっきの攻撃、この間強化ガラス扉を破壊したんだぞ。
最初から度々拍手をしたり奇声を発したりしていたグリュデが、部屋の隅から興奮したように声を上げた。
「すばらしいよ、シーナ! ここまでヴァランの力を引き出したのは君だけだ。テスト稼働のときは、相手にならなかったからね。一応強化ロボットだったんだけど」
いったい何体のロボットをテスト稼働で壊したんだか。そう思うと他人事ながら不愉快になる。
オレも訓練中はロボットと対戦したけど、力の限界テストはもっぱら強化ガラスや合金のブロック相手で、ロボットを相手にはしなかった。
与えられる仕事が違うから、と言われればそれまでだけど、ロボット好きが楽しそうに言うことじゃないだろう。つくづくロボットを物だとしか思ってない奴だ。
ムッとしながらグリュデから目を逸らし、チラリとリズを窺う。興奮してはしゃいでいるグリュデとは対照的に、オレの上着を頭からすっぽりとかぶったまま落ち着いた様子でこちらを見つめていた。
怖くて固まっているのかと思ったら、表情は冷静な科学者だ。オレの能力は熟知してるから心配していないようだ。生体反応も落ち着いている。