異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
たぶん声紋認証があるだろうな。
オレは無言でリズに促す。リズは頷いて、ムートンに告げた。
「ドンマイ」
ムートンの青い目玉がめまぐるしく点滅し、システムメッセージがオレの中に流れてくる。
レトロなロボットは処理速度ものんびりしているようだ。オレの人工知能に比べると、ひとつひとつの作業をかみしめるように処理している。
声紋認証開始。・・・・。
認証一致。
キーワード確認。・・・・。
認証一致。
フォルダロック解除。
ロックが解除されたのを確認し、フォルダごと自分のシークレット領域に移動する。
少ししてムートンの目玉の点滅は停止し、オレは作業を終えた。
移動の課程でフォルダに音声ファイルが含まれていることに気づいたので、一応報告する。
「リズ、ファイル移動完了した。日付の新しい音声ファイルが含まれてたよ。バージュ博士のメッセージかもしれないから後で確認しといて」
「今再生して」
「え、オレの口で?」
「そうよ」
「……了解」
他人の声がオレの口から出るのって、違和感すげーから苦手なんだけどな。自分の声でさえ、最近ようやく気にならなくなったとこなのに。
まぁ、バージュ博士は男だから、リズのときほどじゃないか。もう人工知能に制御を丸投げしてしまおう。