異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
オレがすっかり傍観モードになっていると、シークレット領域で開かれたファイルからオレの口を通して音声が流れ始めた。ご丁寧に口の動きも連動されている。
「リズ、たぶん久しぶりだよね。君ならきっと見つけてくれると思ってたよ。願わくは悪い人に利用されていないことを祈るよ」
優しげな老人の声。老人というには少し張りがあって若々しい。なんだろう。バージュ博士の声はあまり違和感がない。
ちょっと確認して、すぐにわかった。声紋がオレと一緒なんだ。容姿だけじゃなくて声のデータも彼から受け継いだらしい。
ちょっと表情も連動させてみよう。
オレは声の調子に合わせて、淡く微笑んだ。
こちらを見つめていたリズが、懐かしそうに目を細める。
「本当はそばでずっと君を守りたかったけど、それは無理だからね。君に面倒を押しつけてしまって申し訳ない。これを見つけてしまったからには、もうひとつだけ面倒を引き受けてくれないかな。この人格形成プログラムのソースコードを簡単に手出しできない場所に持って行ってほしい」
どこだろう、それ。
「君が持っていると君の身に危険が及ぶからね。だから王宮で保管してもらうんだ。レフォール陛下にはすでにお願いをしてある。陛下の元へ届けてくれないかな」
レフォール陛下って、前国王!? そりゃあ、王宮の中なら科学技術局も簡単に手出しはできないだろうけど。バージュ博士って引きこもり少年だった割に、交友関係がグローバルすぎる。