異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
時刻はすでに深夜になっている。正門前の報道記者や野次馬も減っているだろう。オレのバッテリもある程度回復してる。
「送っていくから。そろそろ休んだ方がいいよ」
オレはバッテリの残量が減っただけだけど、人間のリズは精神的な消耗が体力にも影響したと思う。
慈母の微笑みでムートンにおやすみの挨拶をした後、リズは真顔でオレを見つめた。
「今夜はここに泊まるわ。あなたとはもうひとつ話したいことがあるの」
「それはいいけど、ここ寝るとこないだろ?」
「ソファがあるから大丈夫。以前も泊まったことあるし」
「そう」
小柄なリズなら結構余裕で眠れるかもな。
「で、話って?」
リズは少しの間、黙ってオレを見つめた。
少しの照れと喜び、それを覆い隠すいらだちと非難の感情がオレを見つめる瞳に宿る。
総じて、怒ってる? なんで? オレ、なんかしたっけ?
不愉快そうな感情とは裏腹に、リズは静かに問いかけてきた。
「なんで、あんなことしたの?」
「あんなこと?」
とぼているわけではないが、リズにはそう聞こえたらしい。眉間にしわを寄せてオレを睨む。
「うそつき。もう悪ふざけはしないって言ったくせに」
「あ……」
アレか。
フルスピードで記憶を検索していたオレの脳裏に、マスター命令を阻止したときの記憶がピックアップされて感触まで蘇る。
思い切りやらかしてんじゃねーか、オレ。